梅栽培への思い

曽我梅林は関東三大梅林の一つに数えられ、美しい梅の木々の向こうには雄大な富士山を望むことができる名勝です。この地域では十郎梅をはじめ、杉田、白加賀、南高、鶯宿など、多種多様な品種が栽培され、地元の方々は梅干し、梅酒、ジャムなどの梅仕事に応じて品種を使い分ける文化を大切にしています。最近では、十郎梅と玉織姫を掛け合わせた小ぶりな十郎小町という新品種の栽培も広がっています。

一方で、過去には果実の見た目を少しでも良くしようと農薬が大量に使用され、実付きを良くするために化学肥料が不可欠とされ、省力化のために除草剤が多用された結果、土は固くなり、様々な生き物たちは姿を消していきました。また、後継者のいない高齢農家が多数となり、荒れ始めた曽我山には竹林が広がり猪が人里の近くに現れはじめています。このまま放置しておくと、将来的には耕作放棄地が広がり、素晴らしい梅林や里山の景観や梅仕事の技術や文化が失われてしまうのではないかと懸念しています。

私たちは、微生物から住人まで地域の環境やいのちを大切にするために、農薬や化学肥料などを使用しない農法で梅の栽培に取り組んでいます。梅干しは四人のベテラン農家から伝統的な製法を学び、塩と梅だけで漬けた梅を三日三晩かけて手作業で干す、手間暇かけた製法で作っています。

私たちの梅や梅干しが、美味しくて健康的な食べ物としてみなさまの食生活に貢献すると同時に、曽我の梅林や里山、食や暮らしの文化がより美しく次世代に残っていくことに繋げていきたいと願っています。